がんばらにゃ2012年6月号
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2012.6月号4食の安全安心を考えるVol.1食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。 あなたが、食品の安全性問題の中で一番気にしていることはなんですか?今、盛んに報道されている放射性物質?それとも、残留農薬や食品添加物?あるいは、遺伝子組換え食品?さまざまな意見があることでしょう。 私は科学ライターですが、首都圏に住み家族の健康に気を配るお母さんであり、生協の組合員でもあります。そして、私が個人的にもっとも気をつけているのは、細菌やウイルスなど微生物による食中毒対策です。 なんだ、そんな当たり前のこと?そう言われそうです。でも、食の安全について取材し原稿を書く活動をして10数年。調べれば調べるほど、微生物対策の重要性をより深く意識するようになっているのです。もっとも注意すべきは、微生物の食中毒 厚生労働省の統計によれば、毎年1000件以上の食中毒が発生し、患者数は2~3万人に上っています。発生の9割以上がカンピロバクターや腸管出血性大腸菌、ウイルスなど微生物によるものです。 でも、これは氷山の一角。飲食店や家庭での食事の後に嘔吐や下痢に見舞われても、届けない人は多いでしょう。一晩で症状が治まれば、翌日、わざわざ仕事を休んで病院に行ったり保健所に届けたり、という手間はかけたくないものです。こうしたことから、届けられない食中毒は膨大な数あると見られており、研究者の中には「厚労省統計の100倍程度の食中毒が発生している」と推定する人もいます。 つまり、年間の患者数は実際には数百万人かもしれません。 しかも、症状が軽くてすめば幸いですが、お年寄りなどは体調を崩すきっかけとなりがちです。また、腸管出血性大腸菌やノロウイルスは、感染した人から別の人へ、という食品を介さない「二次感染」も起きているとみられ、死者も報告されています。年間患者数は数百万人? ただし、微生物による食中毒は、調理や食べ方など個人の注意と工夫でかなり防げます。腸管出血性大腸菌やノロウイルスは、食品を加熱すれば大丈夫です。 昨年、ユッケによる食中毒事件で5人が亡くなり、焼肉店や卸業者の責任が問われています。でも、客自身が「深刻な被害を及ぼす腸管出血性大腸菌は自然の中にいて、保菌している牛も多い。牛の生肉やレバーには菌がいる可能性がある」という情報を知っていれば、防げたのではとも思います。 だから、役に立つ情報をみなさんに知っていただきたいのです。これから、なるべく分かりやすく、食の安全に関するお話をお届けします。共に考えてゆきましょう。個人の対策でかなり防げるPROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。2011年4月、科学的に適切な食情報を収集し提供する消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立。http://www.foocom.net/松永 和紀さん食中毒の患者数この10年ほど、患者数は年間2~3万人だが、2006年は冬にノロウイルスが大流行して患者が急増した。その他の原因としてあがっている「化学物質」は主に、赤身魚に特定の細菌が増えて生成する「ヒスタミン」のことで、これも微生物が原因と言える。また「自然毒」は主にフグやキノコによるもの。■ その他  (化学物質・自然毒など) ■ ウイルス■ 細菌2010年2009年2008年2007年2006年2005年2004年2003年2002年2001年2000年(人)45,00040,00035,00030,00025,00020,00015,00010,0005,0000

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