がんばらにゃ2012年8月号
4/16

2012.8月号4食品添加物、農薬、重金属、 天然の有害物質など食の安全安心を考えるVol.3食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。酒を愛する夫、受験勉強中の娘とのてんやわんやの日々も楽しんでいる。松永 和紀さん食品のリスクの原因は多数あります。農薬や食品添加物で生物学的原因や物理的要因を抑えられる場合もあり、総合的な判断を求められます。食品のリスクさまざま総合的に判断しましょう「自然だから安全」とは限らない保存料が安全を守る場合も 保存料で食の安全が向上する場合があることを知っていますか?食の安全を揺るがすのは農薬や食品添加物だけではなく、ほかにも多くのリスクがあります。それらをバランス良く管理することで、総合的にリスクを低減することが大事です。 食品は、リスクの原因となる要素を数多く持っています。化学物質としては、農薬、食品添加物のほか、植物などに含まれる天然の発がん物質やカビが作る毒性物質、カドミウムや水銀などの重金属などがよく知られています。生物としては腸管出血性大腸菌やカンピロバクターなどの病原菌のほか、ウイルスや寄生虫も食中毒の原因となります。また、人に物理的に悪影響をもたらすものとして、放射線を出す放射性物質がありますし、食べ物で気道を塞いでしまう窒息も、年間4000人以上が亡くなっています。 自然がリスクを生み出す場合も多く、多くの人がイメージする「人工的なものは危険で、天然自然は安全」というのは、思い込みに過ぎません。 「食の安全を守る」とは、これらのさまざまなリスクにつながる要因を、上手にバランスをとりながら管理することにほかなりません。昔は、食品にこれほど多くのリスク要因があるとは分かっていなかったので、農薬や食品添加物などを排除すればよい、とされていました。しかし、現代の食品管理は違います。 たとえば、保存料無添加にして食の安全を守ったつもりでも、知らないうちに病原菌が食品で増えていたら、その食品はかえって危険。保存料は、適切に使えば人への影響がないことが確認されており、うまく使った方が菌の増殖を抑えられ、食品の安全性が向上する場合もあります。農業現場では、農薬を使い人体に有害なカビ毒の発生を防ぐ取り組みが行われていますし、食品添加物を用いて食品ののどごしを良くし、窒息をできるだけ減らすような研究もあります。 なにかを排除したり少なくしたりしてそのリスクを小さくしたつもりで、知らないうちに別のリスクが大きくなってしまうことを「トレードオフ」と呼びます。トレードオフが起きないように、多くのことに気を配り総合的な対策を講じることが、現代の食の安全においては求められています。病原性細菌、ウイルス、BSEなど窒息、金属片、放射性物質など化学的原因生物学的原因物理的原因食のリスク食のリスク

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る