がんばらにゃ2012年9月号
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2012.9月号4食の安全安心を考えるVol.4食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。酒を愛する夫、受験勉強中の娘とのてんやわんやの日々も楽しんでいる。松永 和紀さん一部の発がん物質を除く化学物質は、投与量が増えると体への影響が大きくなり致死量にも至りますが、量が減ると影響は小さくなり、一定の量を下回ると、体に影響をもたらさなくなります。化学物質を食品添加物として用いようとする場合には、さまざまな動物実験を行って、体への影響が出なくなる「無毒性量」を明確にし、その量を基に、人が毎日食べても影響が出ない量である「1日許容摂取量」を決めます。実際の残留量がこの1日許容摂取量を大きく下回るように、使い方が定められています。安全性を確認したうえで使われる食品添加物昔の教訓を基に大きく改善適切に選び量を調節し使う 1960年代から70年代にかけて、食品添加物はさまざまな安全上の問題が指摘され、使用禁止となった例もありました。生協などの強い批判を受け、企業は改善をはかり、国も規制を厳しくし、今は、安全性の高い食品添加物と制度ができあがっています。 赤色1号、チクロ、AF‐2…。60年代から70年代にかけて、有害性が問題となり、使用禁止となった食品添加物です。生協運動は、同時期に「危険性の高い食品添加物を使わない食品を」という主張を大きな核に、盛んになって行きました。 その印象が強いからでしょう。生協には、食品添加物を嫌う人が今でも多いようです。しかし、生協や、みなさん方が、批判したからこそ、食品添加物は改善され、厳しく安全性を審査したうえで国が認可するシステムができました。現在の食品添加物の安全性は、非常に高いレベルです。 安全性を検討するうえで重要なのは、「どの化学物質を選んで使うか」と「どのくらいの量を使うか」という二つの要素です。添加物候補の化学物質はその毒性をさまざまな角度から調べられ、発がん性がなく、そのほかの毒性も問題のない物質でないと、国が使用を認めません。さらに、使う量や使い方、使う頻度なども厳しく決められて、食品への残留が一定量以下になるように管理されます。 化学物質は図のように、量によって体への影響が大きく変わります。現在、認可されている食品添加物は、製造時に食品にまったく残らないか、残ってもグラフの赤線の領域しか残らないように使い方が定められているので、体への影響は事実上、ありません。 量が多いと深刻な影響を与えるのは、どの化学物質も同じです。たとえば、塩や砂糖も大量投与すれば動物は変調を来たし、もっと多くの量を与えると死にます。しかし、だからといって「塩や砂糖は、動物実験で与えると死ぬから危険。使うな」とはだれも言いません。私たちは上手に量を調節してこれらを用い、おいしい食事をいただいています。 現代の食品添加物も同じです。適切な化学物質を選び、量をうまく調節して、食品の品質や保存性の向上などのメリットを得つつ、人の体に影響のない使い方をする仕組みができています。これも、生協運動の大きな成果の一つなのです。(ADI:1日許容摂取量)無毒性量×1/100(NOAEL)投与量無毒性量実際の残留量化学物質の体への影響・概念図生体影響

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