がんばらにゃ2013年1月号
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食の安全安心を考えるVol.8食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。酒を愛する夫、受験勉強中の娘とのてんやわんやの日々も楽しんでいる。松永 和紀さん2013.1月号4リン酸塩が使われたかまぼこ類も安全です かまぼこやちくわなどの説明にある「無リン」という言葉、意味を御存知ですか?かまぼこ類の原料となる冷凍すり身には通常、食品添加物としてリン酸塩が使われています。使われていないものが「無リン」です。両者の安全性に、違いはないのです。食品中に占めるリンの含有量 (文部科学省「五訂増補日本食品標準成分表」のデーターより引用)無リンすり身入手難しく かまぼこ類は昔、漁港でとれたさまざまな魚が原料として用いられました。しかし、品質が安定せず製造は大変な苦労。高価にもなりがちでした。約50年前に、スケトウダラを船上ですぐに加工し冷凍すり身にする方法が考案され、現在では、スケトウダラのほかイトヨリ、グチなどから作った冷凍すり身が大量に輸入され、国内でかまぼこ類に加工されています。 冷凍すり身を作る際、砂糖と共にリン酸塩を入れると、品質が安定し保水性が良くなり、ぷりぷりとした食感が保たれるとされています。そのため、多くの冷凍すり身にはリン酸塩が使われています。一方で、「製造に不可欠とは言い難い食品添加物は使ってほしくない」という消費者の声もあり、無リンの冷凍すり身も作られてきました。ところが、かまぼこ類は最近、海外でも人気が高まり冷凍すり身は引っ張りだこ。無リンすり身の調達は大変難しくなっています。 リン酸塩を使っていても、安全性には問題ありません。食品添加物として用いられるリン酸塩は、国のさまざまな審査の末に使用を認められています。それに、使われる量は魚肉の重量の0.2%程度。かまぼこ類は、魚肉や塩、砂糖、リン酸塩などで作られた冷凍すり身に、でんぷんなどを混ぜて加工されます。そのため、かまぼこ類のリン含有量は、魚肉にもともと含まれるリンとリン酸塩を合わせても練り物100gあたり、数10〜100 mgくらい。つまり、重量の0.1%程度にしかなりません。 リンを摂り過ぎるとカルシウムの吸収が抑制されるため、「かまぼこ類は無リンでなければ」と主張する人たちもいます。しかし、リンは、生き物の体には必須で、魚や家畜の肉は重量の0.1〜0.3%程度含み、これらに比べてもかまぼこ類のリンは多くはありません。 リン酸塩は、原料の魚を大事に活かして食べるために使われています。無リンにするか、有リンにするかはお好みに合わせてお選びください。魚や肉などにもリンは含まれる食 品精白米小麦粉・強力粉ほうれん草(ゆで)小松菜(ゆで)大豆豆腐(絹ごし)牛乳943104346580819323023086018024050060さば(生)いわし(生)しらす干し(半乾燥)牛肉(ヒレ・生)ミルクチョコレートアーモンド蒸しかまぼこリン(mg/100g)食 品リン(mg/100g)

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