がんばらにゃ2013年6月号
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食の安全安心を考えるVol.12食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。2013.6月号4PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。昨年末『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん微生物汚染を防ぐ食品企業の努力知って 昔のおまんじゅうはすぐにカビたのに、最近のはカビが生えない。きっと保存料を使っているのよー。そんな声をよく聞きます。いえいえ、そう簡単に保存料は使いません。食品企業は、カビや細菌など微生物の汚染を防ぐためにさまざまな努力を重ねています。 微生物は空気中を浮遊しており、人の体や衣服にも付いています。人の皮膚には、1平方センチメートルあたり数千、数万という菌がいるそうです。もちろん、小麦粉など原材料にも、細菌やカビなどが含まれています。自然のものなのですから、仕方がありません。 そのため、家庭でおまんじゅうを作って置いておくと、大量の微生物が付いてしまい、1、2日でカビが生え腐ってしまうのです。小さなお店で売られる作り立てのおまんじゅうはとてもおいしいものですが、でも、やっぱり微生物の汚染を防ぎきれません。 ところが、大型工場で作られ包装されるおまんじゅうは、まったく違う設備、環境で作られます。微生物が中に入り込まないように、さまざまな技術が用いられているのです。 たとえば、多くの工場は室内と室外の空気の圧力を変えて、外から微生物の混じった空気が流れ込みにくい条件にしてあります。室内では、掃除を十分にし、床が常に乾いているように気をつけます。濡れていると水滴が跳ね上がりやすく、微生物も増殖しやすいからです。 さらに、作業する人は作業着を着て帽子をかぶり髪を覆い、マスクもして皮膚が極力出ないようにします。そのうえで、入室前には入念に手洗いをしてそれから手袋をし、エアシャワーを浴びて髪の毛などの異物や微生物を吹き飛ばし、やっと入室して働くのです。 焼き上がって出てきたおまんじゅうは加熱殺菌されていますので、衛生的な設備の中で急冷して、すぐにしっかりと包装します。脱酸素剤やアルコール蒸散剤を同封し、微生物がわずかに付いていたとしても、その活動を抑えます。こうして、開封するまでは日持ちのする賞味期限の長いおまんじゅうになるのです。 おまんじゅうだけでなく、どの食品でも品質や安全性を上げる技術革新が続き、努力が重ねられています。どうぞ思い込みにとらわれず、おいしく召し上がってください。自然界は菌やカビだらけ衛生的に作り賞味期限延ばす講演会「食の安全安心のウソ・ホント (仮称) 」食品添加物、遺伝子組換食品、残留農薬、放射性物質…、食品の安全性の問題の中には、いろいろな問題がありますが、どれくらいのことを正しく理解しているでしょうか?食品の基礎知識や食品添加物への考え方、食を取り巻く現在の問題点などを科学的根拠に基づいて、わかりやすくお話しいただきます。7/6(土) 開場12:30 / 開演13:00 / 終了15:00福井県国際交流会館(福井市宝永3丁目1-1)    150人(先着順)松永和紀氏(科学ライター)     15ページコールセンターまで所時定講問[主催] 公益社団法人 ふくい・くらしの研究所[共催] 福井県生活協同組合連合会・福井県民生活協同組合  無 料

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