がんばらにゃ2015年8月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。企業が自らの責任で機能性を表示する健康効果が高いのは食生活の改善、運動Vol.253つの保健機能食品(栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品)の違い食物繊維(難消化性デキストリンなど)、オリゴ糖、乳酸菌などさまざま食事摂取基準で数値が設定された成分以外のもので、安全性、機能性などが確認されたものビタミン、ミネラル類など20種類国が「規格基準」、表示の文言を決定。製品が規格基準を満たす場合には、企業の責任で表示できる国が、安全性や機能性、表示について審査し、認可する国は、安全性や機能性などについての要件を、基準やガイドラインなどで示している。製品が要件を満たしていれば、企業の自己責任で表示できる生鮮食品、一般加工食品、サプリメント形状の加工食品一般加工食品、サプリメント形状の加工食品生鮮食品、一般加工食品、サプリメント形状の加工食品 企業が、自己責任で食品の健康効果を容器や包装に表示する「機能性表示食品」制度がはじまり、6月から店頭に商品が並んでいます。「特定保健用食品」と異なり国は審査しておらず、消費者が安全性や機能性に関して、公開されている情報を基に判断しなければなりません。国の審査はなく、消費者が情報を判断…「機能性表示食品」制度 始まる 食品は原則として、健康効果(機能性)を表示したり広告や宣伝をしてはいけません。ただし、これまでも「栄養機能食品」と「特定保健用食品」(トクホ)は表示できました。栄養機能食品はビタミンやミネラル類など20成分の表示に限られます。トクホは、製品ごとに食品安全委員会、消費者委員会などが審査し認可するので時間がかかり、企業の開発費用は1億円以上とみられています。そこで、これらの欠点を補い中小企業でも表示しやすい制度として「機能性表示食品」ができました。3つを合わせて「保健機能食品」と呼びます。 新しい機能性表示食品は、企業が自らの責任で安全性や機能性などについて確認し、表示します。国は審査しません。ただし、安全性と機能性について細かな要件を国が定めており、それらをクリアしなければいけません。機能性については、人で効果が学術的に認められている必要があります。 企業は、書類を作成し根拠となる学術論文なども添えて消費者庁に届け出します。消費者庁は、書類が整っている場合には受理し、企業は届け出60日後に販売を開始できます。消費者庁は、それらの書類をウェブサイトで公表します。 つまり、企業が正直に研究開発し、その内容を偽ることなく届け出るということを前提とし、国が審査する代わりに、消費者が公開された資料を見て安全性や機能性を判断して購入するかどうか決める、という制度なのです。 機能性表示食品にはマークはなく、容器包装に機能性表示食品と書き、「本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届け出されたものです。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官による個別審査を受けたものではありません。」と表示してあります。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。2012年『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん 機能性表示食品はあくまでも、健康な人が対象です。医薬品と相互作用する場合もありますので、病気を治そうとして機能性表示食品を摂ってはいけません。 一般的な健康食品は、人での効果が確認されていないものも多く、それらに比べれば機能性表示食品の方がいいでしょう。しかし、個人的な意見ですが、これまでに届けられた製品の多くは、書類を読む限り、効果はごくわずかだったり、根拠が希薄だったりします。食生活を改善しバランスよく適量食べることや適度な運動が健康維持に役立つという強い根拠が数多くあり、私はこちらの方をお勧めします。栄養機能食品特定保健用食品機能性表示食品国の関与対象成分対象食品表示国が成分の種類ごとに決める国が製品ごとに審査。原則として健康維持・増進の内容だが、成分によっては病気のリスク低減表示も認められている企業責任で表示。健康の維持・増進について表示できる。病気の治療や予防効果などの表示は認められていない2015.8月号4
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