がんばらにゃ2015年12月号
4/16

2014年度の食品自主回収の内訳出典:農林水産消費安全技術センター食品自主回収情報http://www.famic.go.jp/syokuhin/jigyousya/ 新聞やテレビなどで頻繁に食品の回収に関するニュースが流れます。でも、危険な食品が増え回収も増えた、というわけではなさそうです。法律の遵守に対する世間の目が厳しくなり、「襟を正して自主的に回収を」という企業の動きが強まっているのです。食品の回収さまざま理由をよく調べましょう 食品回収には、法律に基づき自治体が命令するものと、企業が自主的に回収するものがあります。企業が悪質であったりする場合など行政から回収命令が出されますが、件数は多くはなく、回収の多くは自主的なものです。農林水産消費安全技術センターの調べでは、自主回収は2014年度、1014件。1000件を超えたのは、同センターが調査を始めた2003年度以降、初めてのことです。 2013年12月に冷凍食品に農薬が混入される事件が起きた時には、その工場で製造された冷凍食品すべてが自主回収の対象となり、600万個あまりが返されました。製造時の衛生管理に不備がありカビが生えた、食品添加物の使用量を間違えて基準を超えてしまった、などの事例もあります。このような「食べると体へ影響があるかも」という回収には、消費者も迅速に応じる必要があります。 最近目立つのは、アレルギー表示のミス。企業が製造した時にうっかり書き漏らしてしまうのです。アレルギー患者が「入っていない」と思って食べて、発症するかもしれません。企業には、緊張感を持って製造し正しく表示をしていただきたいものです。 一方で、回収される食品の中には、実は大きな問題ではないのだけれど、と思うものも多数あります。たとえば、クッキーの賞味期限を「15・06・28」とすべきところを、「15・60・28」とラベルに打ってしまった事例。だれでも「うっかりミスだな」とわかりますね。ミックスキャンディーの袋に7種類のあめを入れるべきなのに5種類しか入れず回収、というケースもあります。このようなミスは、以前はあまり問題視されていませんでした。今は、非難される前に公表して回収しようとする企業が目立ち、回収件数を押し上げています。 自主回収された食品は、中身にまったく問題がなくてもたいていの場合、廃棄処分されます。店や客の段階でどのような管理がなされたのか不明なので、再製品化するわけにはいかないのです。もったいない。私は、理由を調べて健康影響がなく損もしていない、とわかれば、返さず食べてしまいます。 回収の理由はこのようにさまざま。生協では、回収の際には詳しく理由を説明してくれます。また、消費者庁ウェブサイト(http://www.recall.go.jp)やリコールプラス(http://www.recall-plus.jp)なども情報を提供しています。関心を持って、その理由を調べてみましょう。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。2012年『お母さんのための「食の安全」教室』(女子栄養大学出版部)を刊行。松永 和紀さん食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。健康影響ありそうならすばやく協力をうっかりミスが廃棄につながる例もVol.27自主回収合計1014件期限表示間違い52%添加物表示間違い5%その他の表示不適切14%アレルギー表示間違い 29%表示不適切による回収の内訳異物混入15%品質不良13%規格基準不適合12%その他10%容器・包装不良3%表示不適切47%2015.12月号4

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る