がんばらにゃ2018年12月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。消費者団体「FOOCOM」(フーコム)を設立し、「FOOCOM.NET」(http://www.foocom.net/)を開設した。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.40 食の安全管理の要となる法律、食品衛生法が15年ぶりに改正されました。外食や中食、調理済み食品の増加など、日本人の食事の形態が大きく変化し、輸入食品も増えている実態に沿って、衛生管理を強化しようとするものです。何が変わるのか3回にわたって解説しましょう。食品衛生法改正で「食の安全」より厳しく 日本人の食事が大きく変化してきています。外食・中食の市場規模は2016年には254兆円に。共働きや65歳以上の高齢者世帯の割合が増え調理済み食品、加工食品を使う割合も増えました。食品製造加工や流通に関わる企業の責任がより重くなってきています。 一方で、順調に減ってきた食中毒事故と患者数がこの7・8年、下げ止まりになっています。事故は年間1000件強、患者数は2万人程度で、減らないのです。厚生労働省の統計のとり方にも問題があり、実際の食中毒発生数は数十〜数百倍に上る、という指摘も科学者から出ています。 輸入食品も増え、2017年度は243万件、重量にして3400万トンが入ってきました。日本は農地が狭く人口が多く、どうしても他国からの食品輸入が必要です。しかし、日本国内の衛生管理基準が低いので、他国に高度管理を要求しづらい、という実態もありました。 こうしたさまざまな問題を解決しようと、法律改正により新しい仕組みがいくつも導入されたのです。 食品用の器具(製造加工装置やコンテナ容器、調理器具や食器、はしなど)と容器包装(主に販売する時に食品に触れるパッケージ)のポジティブリスト化もその1つです。ポジティブというのは、肯定的という意味。つまり、「使って良い物質」をリスト化する仕組みです。 日本では従来、どんな化学物質を使っても自由。ただし「使ってはいけない物質」が決められていました。これをネガティブリスト制といいます。 この制度の場合、特定の物質の問題が急に明らかになった時に問題が生じます。「使ってはいけない物質」に指定するには、科学的なリスクの評価と手続きが必要で、時間がかかるのです。 一方、国際的には、あらかじめ化学物質の安全性を評価し、問題がないもののみを製造に使って良いと認め、それ以外の化学物質の使用を禁じる「ポジティブリスト制」が主流となってきています。そのため、日本も制度を改めることとなりました。 器具や容器包装の製造業者は、ポジティブリストに載っている化学物質のみを使って製造します。その際、製造管理規範(GMP)というルールに則って作り記録もつけ、ポジティブリスト制をクリアしていることを客観的に判断できるようにします。 これにより、食品用の器具や容器包装の安全性が高まることが期待されています。器具や容器包装のポジティブリスト化外食、中食、調理済み食品…日本の食が大きく変化食料支出に調理食品、外食が占める割合200420092014■調理食品 ■外食共働き世帯、65歳以上の高齢者世帯では、食事において調理食品や外食の占める割合が大きくなっている(出典:厚生労働省資料 総務省「全国消費実態調査」より作成)。10年で17.0%増加50403020100(%)403020100(%)(年)(年)共働き世帯(妻が正規雇用)65歳以上の夫婦のみ世帯20042009201410年で14.4%増加10年で14.4%増加3がんばらにゃに関するご意見、ご感想などをお聞かせください…… ganbaranya@fukuicoop.or.jp

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