がんばらにゃ2019年10月号
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食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。農林水産省農林水産技術会議委員、消費者委員会食品表示部会委員などを務めている。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さんVol.43 食に関する情報がまた混乱しているようです。週刊誌などで近ごろ、食品添加物を〝危険〞とする情報が目立ちます。しかし、科学的根拠が薄く国も動きません。ところが、そのことが「野放し」と報じられ、さらに不安を煽られるのです。改めて、情報を見極める主なポイントをお伝えしましょう。氾濫する〝危険〞情報見極める4つのポイント 先日、保存料の1つが子どもの病気のリスクを上げているかも、という米国の大学による研究論文が発表され、日本でも一部のメディアが取り上げました。しかし、どの国の行政機関も動いていません。なぜならば、研究は培養された特殊な細胞に保存料を大量に与えて影響をみたもの。人が口から食べて消化の末に体に吸収される場合とあまりにも条件が異なるので、細胞実験の結果を基に人への影響、安全性を判断するのは不可能です。 認可されている食品添加物は、多くの試験の結果を総合的に検討して安全を認められています。信頼性の低い試験結果では、その規制は覆りません。 動物実験も体の吸収や分解の過程で人と同じところと異なるところがあるので、結果は慎重に判断されます。ところが、報道の中にはそうした違いや科学を無視して不安をかき立てるものが少なくありません。 これまで何度かお伝えしてきたように、その物質の体への影響は、食べる量により大きく異なります。食塩も1回に百数十g食べると死にますが、私たちは量を調節して食べています。 動物に、人に換算すれば1日に数百gにあたる量を強制的に食べさせて影響をみる試験で、死んだ、という結果があっても、人で数mg食べた時の影響を推し量る参考にはなりません。数百gは、数mgの10万倍の量だからです。ところが、摂取量を無視した情報が、氾濫しています。 自然・天然であっても有害なものは、フグ毒やキノコ毒、腸管出血性大腸菌をはじめとする食中毒菌など数多くあります。一方、人工合成でも安全なものも多く、自然か人工かでは、安全性はわかりません。添加物は、人工・自然を問わず、安全性を評価されたうえで使われています。 添加物は、国のさまざまな機関が国内外の試験結果を多数集めて安全性や有用性などについて評価確認し、使用を認めています。どのような根拠を基にどう考えて使用を認めるのかも、説明されています。 危険だという情報を知ったら、まずは食品安全委員会や厚生労働省などの公的機関がどのような判断をしているか、調べてください。情報は企業秘密の部分を除き公開されています。 危険だ、という情報はインパクトがあり、人を引きつけます。それ故にマスメディアも取り上げやすく、情報も拡散しやすいのです。しかし、食の安全の規制は、国際協調が進んでおり、多数の国で多くの情報が公開されているので、日本政府や一部企業が消費者をごまかす、というようなことは非常に難しくなっています。そうした実態も踏まえて、科学的に正しく情報を見極めていただきたいと思います。3.「人工合成だから危険」 ではない4.日本の食品安全委員会や 厚生労働省などの 判断を調べる1.動物実験、細胞実験は、 危険の根拠とならない2.摂取量が大事あおくつがえ2019.10月号4
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