食にまつわるちょっとした疑問について科学ライターの松永和紀さんがわかりやすくお伝えします。Vol.49厳しくなった減塩目標表示を活用、調理も工夫を では、どのようにして減塩するか? まずは、加工食品を食べたり調理したりするときに、栄養成分表示をよく見ましょう。以前は、表示されていない食品が多く、あっても食塩はナトリウムの量で記載されていました。ナトリウム量に表示参考にバランスよくうま味も活かして1日の摂取限度は男性7.5 、女性6.5gg食塩相当量の基準3.0g未満3.5g未満4.5g未満5.0g未満6.0g未満7.0g未満7.5g未満男性目標量年齢女性目標量1~2歳3~5歳6~7歳8~9歳10~11歳12~14歳15歳以上3.0g未満3.5g未満4.5g未満5.0g未満6.0g未満6.5g未満6.5g未満出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準 (2020年版)」 成人はより一層、減塩が大事。調理の際にうま味を活かすと、減塩しても美味しく食べられることが数々の研究でわかっています。うま味は肉や魚、昆布やトマトなどさまざまな食品に多く含まれています。私自身は、うま味調味料や顆粒状の風味調味料を使って、青菜のお浸しに使う醤油を減らしたり、汁物の減塩に努めています。うま味調味料や風味調味料の安全性に問題はありません。みなさんも工夫して減塩に努めてください。 日本人の栄養状態における最大の課題は食塩の摂りすぎです。国が2020年から、減塩についてより厳しい目標を運用していることをご存知ですか?塩味は美味しく減塩はとても難しいのですが、コツもあります。ご紹介しましょう。 PROFILE食品の安全性や環境影響等を取材している科学ライター。京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち独立。「メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学」(光文社新書)で科学ジャーナリスト賞2008を受賞。環境省中央環境審議会委員、消費者委員会食品表示部会委員などを務めている。新刊は「効かない健康食品 危ない自然・天然」(光文社新書)。松永 和紀さん 日本人は食塩の摂りすぎです。2019年の国民健康・栄養調査によれば、平均して男性で1日10・9 、女性が9.3 を摂っていました。この数字は自己申告による食事調査に基づいており、実際にはもう少し多いとみられています。 世界保健機関(WHO)のガイドラインで推奨されているのは1日5 未満。日本人でこれを満たしているのは人口の5%程度しかいません。目標が厳しすぎると多くの人が「無理だ」と最初から諦めてしまいます。そこで、厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性が1日7.5 未満、成人女性が6.5 未満と目標量が決められました。以前の2015年版に比べそgggggれぞれ0.5 下がっています。子どもの目標量も決められています(表参照)。 たとえばカップ麺であれば1食で5 、牛丼は2〜3 の食塩が含まれます。目標量は、厳しく節制しないとクリアできない数値です。でも、食塩の摂りすぎは高血圧になりやすく、脳血管疾患などにつながります。また、塩気の強い食品の摂りすぎは胃がんのリスクも上げます。よく、味噌の塩分は大丈夫という人がいますが、科学的根拠は希薄。情報に惑わされずしっかりと注意すべきです。ggg2・54倍をかけ算すると食塩相当量になりますが、計算が面倒でした。 しかし、2020年4月からは表示が義務化され、一部の小さな食品などを除き加工食品は原則として栄養成分表示がなされています。また、ナトリウムではなく食塩相当量が示されるようになりました。食べる分にどの程度の食塩が入っているか、調べてみましょう。 子どもの食事にも注意を。たとえば、ウインナーソーセージ1本は通常、0.2〜0.4 の食塩を含みます。5歳の子どもの食塩の1日目標量は3.5 未満。1本食べると、目標食塩量の約1割に相当するかも。「肉や魚をなかなか食べてくれないけれどウインナーソーセージは食べる。よいたんぱく源になる」と思っている保護者も多いでしょう。その通りです。でも、食塩のことを考えると、毎日ではなく2日に1回のお楽しみに……というふうに、表示を基にバランスのよい食事を組み立ててほしいのです。gg2021.2月号4
元のページ ../index.html#4